猫町旅情 各曲解説

  1. 猫町旅情

萩原朔太郎作の短編「猫町」を知ったのはつげ義春の「猫町紀行」と云う随筆を読んでのこと。アルジャーノン・ブラックウッド「いにしえの魔術」も猫町であるしH.P.ラブクラフトの「ウルタールの猫」も猫町の仲間。旅をしていると猫町に行き当たったようなそうでないような気分になることがあって、僭越ながら猫町の流れの先にワタシの曲を並べてみることにしました。このところご高齢の方がやっていらっしゃったお店が軒並み閉店される場面に遭遇することが多く、非常に残念に感じております。そんな気持ちも少しブレンドしてみました。キーはE。ギターはレギュラーチューニング。最初のC#mの鳴りはアメリカ(イギリスのグループ)の「Sister Golden Hair」を意識しました。他のコードに対する気持ちの細かいディテールは猫町旅情説明会などでお話致します。

 2. 魚眼記

このタイトルは火野葦平作の短編「魚眼記」から頂戴しました。自分が魚であったりそうでなかったりが曖昧に行き来する中でワタシが90年代にとても影響を受けたレニーニ(ブラジルのシンガー)が脳内体内で発酵熟成されたのを急に取り出してみたギョガンキです。ギョ。キーはEm。レギュラーチューニング。イントロ3つ目のコードはRUSHお馴染みのあのコード(F#7add4?)です。ちなみにワタシ、さかなクンのお名刺を持っているのが自慢です。

 3. 帰ってきた河童ちゃん

ウルトラマンが帰ってきたと思ったらそれは以前のウルトラマンでなく別のウルトラマンだったと云うのが帰ってきたウルトラマンです。それでベムスター(宇宙怪獣)に太刀打ち出来ず無謀に太陽に向かって飛んで行ったら(エネルギー補充のため)太陽の引力圏に入ってしまってお陀仏になりそうなのをウルトラセブンに助けてもらいウルトラブレスレットをもらって地球に戻ってきたところでMAT加藤隊長が「ウルトラマンが帰ってきた」と呟いたところでようやく帰ってきたウルトラマンの辻褄が合ったわけでしてここは子供の頃からずっと気になっていたポイントです。そんなわけで河童ちゃんも帰ってきました。特にどこかに行ったわけでもないのに皆に帰ってきたと云われたので帰ってきたことになりました。それは大事なことではなく考えなければならないのは他のことです。キーはC。レギュラーチューニング。リズムのイメージは「新・オバケのQ太郎」。イントロのベードラ4つ打ちが無闇にニンゲンのコウフンを促すので困ったものです。それはQ太郎の方のイントロね。河童じゃない方。

 4. ヒトガタ

特に何のきっかけもなく頭に浮かんだ言葉がヒトガタでした。神道の大祓で使う和紙のヒトガタ。ちょっと怖いような馴染みが深いような。子供の頃は紙を切って色々な形を作って遊んでいました。子供の頃は親が洋服の縫製の仕事をしていたので家に裁ち鋏が幾つもあったのです。小さい鋏は使いにくかったのでその大きな裁ち鋏で親戚からもらった電算機で使用済みの沢山の紙を切っていました。上手く切れたのも、失敗したのも、みんな愛しい形をしていました。キーはEm。レギュラーチューニング。サブドミナントのAmをAm7からAm6へ、ドミナントのBをBaugからB7へとこっそり移動させているのがちょっとお気に入りのポイントです。そして自分の40数年のギタリストとしての自分のキャリアの集大成たる歌を全く聴かずに意識もせずに徹頭徹尾弾きまくったリードギターもかなりお気に入り。人造人間キカイダーの主題歌の途中から出て来るリズムも何も無視して弾きまくるファズギターの領域にまで踏み込めたかどうかはこれから歴史が判定してくれることでしょう。なんのこっちゃ。

 5. 怪奇フキノトウ男

親切で可愛げのある悪の秘密結社ショッカーの新たなる怪人、怪奇フキノトウ男で御座います。ショッカーの後を継いだデストロンなどはライダーマンの結城丈二に丁寧にお正月の年賀状を出していたくらいですからね(差出人住所は横浜市中区山下町235番地)。往年の悪の秘密結社より最近は人間社会の方が悪いやつ多いですね。いつか「恐怖子猫男」とか「死神ダンゴウオ」とかも改造して誕生させたいと考えます。そしてよく考えると天丼で改造人間を造るとテンドンマンになって奇妙な歌を歌いながら近所を徘徊するであろうその映像を思い浮かべると怪奇や恐怖を超えて狂気や猟奇と云ったワンランク上のキャッチフレーズにせねばなるまい。そんなことを毎日考えています。キーはG。レギュラーチューニング。時間があったらスライドギターを入れたかった。それはまた別の機会に(スライドはあまり得意ではないです)。

 6. サヨナラは云えなかった

さようならでもサヨウナラでもなくサヨナラです。ラブソングのように思えますが違います。野球観戦の直後に出来た歌です。やれやれ。キーはC。レギュラーチューニング。横浜DeNAベイスターズがんばるべし。打てよお前。あ、今はお前って云っちゃいけないんでしたっけ。「お前とは云えなかった」って曲作っちゃうぞ。その他にも「サヨナラをやっと云えた」とか「サヨナラは気分いいね」とかも構想中です。作らないけどね。その昔オフコースの「さよなら」はシングル盤持ってました。さよならと云う言葉の、またはそれを含むタイトルの曲はいっぱいあります。桜よりあるんじゃないかしらん。

 7. 蒸発都市

ウルトラセブン第34話「蒸発都市」よりインスパイアを受けました。何かと何かが戦っていますが最初は猫町vs河童ちゃんでしたがどうも猫や河童が出過ぎだと思ったのでそのマッチメイクは中止して宇宙生命体vs人間にしてみました。歌詞に噛み付くとか引っ掻くとかがあるのは猫町の名残です。それにしても人間は云ったこととやってることに差があるなと思うのですよそれも何だかアンヌ隊員の暴走って感じもしないではないですけどねタケナカ参謀は地球防衛軍は邪魔しないって約束したのにそのエリアに入ってきてダンを勝手に探し出したりしたからそりゃ宇宙生命体も気分を害するでしょ何だよ人間ってよー約束守んないのかよーってな感じで。でもビル街を切り取って見事に移動させたりウルトラセブンもあっさりアンダーコントロールしちゃったりとかなり能力が高いのにヒジョーに詰めが甘いですな宇宙生命体。それにしてもレコーディング時はドラムとか入れる予定はなくてドラム聴いて歌っているのでもないのに何だかドラムと見事にマッチしている自分がオモロイのでした。こう云う魔法も時折あります。キーはDm。チューニングはドロップD(6弦だけ1音下げ)。

 8. ヒトゴト

子供の頃に最初に覚えた洋楽曲はレインボウズの「バラバラ」。その後「ゲバゲバ」「ドンズバ」「ウルトラ」「ノンポリ」などカタカナ四文字の気になる言葉がたくさん頭に入ってきました。「サンタナ」「パープル」「ヨウスイ」「タクロウ」「タカナカ」なんて音楽もカタカナ四文字だと馴染みがあるように思います。そして現代はディスコミュニケーションの時代。何だかあっさりしてるんだよね今の日本。妨害電波が出てるよね。どこかから。キーはF#。マイナーでもメジャーでもない感じ。レギュラーチューニング。やはり例のRUSHコードは出て来ます。キーF#の定めです。ちなみにクチバシは入れるんじゃなくて挟むんですよね。反省しています。

 9. 鏡

現存する最古の鏡は紀元前2800年のエジプトの鏡。きっともっと前から水面に映る自分とかを眺めていたことでしょう。自分の良いところはちゃんと見てあげたいけれどそれをあんまり信用し過ぎちゃうと自分で自分を騙すようになってしまいます。それのどこが悪いのと仰る向きも御座いましょうがまあほどほどにしましょうね鏡よ鏡よ鏡さん。キーはAm。レギュラーチューニング。メインギターは実はサンプルしてループしたもの。この方が鏡っぽいでしょ。

 10. ヒトダマ

似たタイトルが三つあると云うのはToolのアルバム『Lateralus』に「Palabol」と「Palabola」と似たタイトルの曲が並んでいてそう云うのをやってみたいなと思ったのがきっかけです。本懐を遂げました。そんなわけでのっぺらぼうもぬっぺっぽうもいます。キーはC。レギュラーチューニング。ちなみにクレイジーキャッツはワタシのルーツミュージックと呼んでも過言ではありません。今までそんなことは微塵も表出させてきませんでしたが遂にやりました。やってやったぞ。

 11.  とてもみじかいラブソング

割り切れない、に続いてまたラブソングが出来ました。短いですが濃いめです。キーはBb。レギュラーチューニングです。アルペジオの3番目の音が開放弦(3弦のGか4弦のD)なのは一番最初の小野瀬雅生ショウアルバムの「アンスリウム」の手法です。ありがとうございました。